作詞家・たかたかし コメント
歌手の存在は、まずその声によって際立つ、と私は思っている。
全身から声を絞りだすようにして歌う清水博正君の歌は、闇の中に光を求めて彷徨いつづけてきた彼の魂の叫びであり、歌われる言葉は「言霊」となって聴く人の心に立ち現れる。それは、尋常ではない。
徒然草に「よろずの道の人、たとひ不堪なりといへども…」とある。
心の奥深いところから発せられる彼の歌は、尋常でないというそのことによって、彼が選ばれてこの世に生まれてきたことを証明しているのだ。
2007年10月10日 曇りのち晴
作曲家・弦 哲也 コメント
毎年、『NHKのど自慢グランドチャンピオン大会』は、未完の音楽性、そして個性、人間性をそのまま歌にぶつけてくる出場者に出逢えるのが楽しみだ。
今年の3月、そうした期待を胸に審査員席に着く。いい歌が続く。六番目に登場したのが清水君だった。
その歌を聞いて鳥肌が立つほどの感動を覚えた。もちろん歌の上手さもあるが、十六歳の盲目のその少年は十六年間の人生を総べてぶつけてきている、喉で歌っているのではなく全身で歌っているのだ。
まるでその日その瞬間が燃え尽きてもいいと思える様にも聞こえた。家に帰り寝付かれないでいると、同じく審査委員をされていた作詞家のたかたかしさんから電話が入る。
「弦ちゃん、俺も眠れないんだよ、チャンスがあるなら清水君に歌を書きたいよ」と。
若い遊び盛りの十六歳の少年達は将来について「まだまだ時間は十分あるさ、そのうちに」と夢を語りたがらないが、清水君は「僕の歌を同じ様に目の不自由な方や、お年寄りの方に聞かせてあげたい、プロになりたい」と熱く語る。
この度、彼のために書いた曲は大人が感じる恋歌だが、清水君でなければ出せない世界だ。
雨の夜、目を閉じてそっと聞いてほしい。きっと、涙をこぼすだろう…。
2007年10月9日 雨